扇ノ山
概 要 扇ノ山は、鳥取市・八頭町・若桜町の境にある標高1310.0mの山です。 樹木に邪魔されながらも、山頂からは山並みを眺めることが出来ます。 登山道は幾つかありますが、今回は兵庫県と鳥取県の県境近くにある畑ヶ平越からのルートを往復します。 中国自然歩道の一部にもなっていて、広くて明瞭な道が続いています。
起 点 若桜町 畑ヶ平越
終 点 若桜町 畑ヶ平越
畑ヶ平越…旧道分岐…大ヅッコ分岐…展望デッキ…扇ノ山…展望デッキ…大ヅッコ分岐…旧道分岐…畑ヶ平越
所要時間 2時間20分
歩いて... 登山道は、笹竹や草などが刈り払われて歩き易くなっていました。 道標類はあるものの半壊しているので、再整備の必要がありそうでした。 尾根に出る手前には横木の階段が続いていて、何度も立ち止まりながらの登りとなりました。 雲が出ていたのが残念ですが、展望デッキや山頂からは山並みなどを眺めることが出来ました。
関連メモ 扇ノ山
コース紹介
畑ヶ平越
国道9号の蒲生トンネルの少し東側から県道262号を南下していきます。 県道103号に変わった道を奥へ進み、谷筋に続く狭い道を曲がりながら登っていきます。 小橋を渡った所から右へ分かれていく未舗装の道を見送っていくと、 右への曲がり角にがあります。 正面には標識が立っていて、右の道は「畑ヶ平高原」、左の橋を渡っていく道は「肥前畑」となっています。 右へ曲がって更に登っていくと、道のすぐ傍の岩壁を流れ落ちるがあります。 「上山高原入口」の標識の立つ未舗装のを右へ分けていくと、 傾斜が次第に緩やかになってきます。 この辺りが畑ヶ平高原かと思いながら進んでいくとがあります。 角には「畑ヶ平」の標識が立っています。 直進していくと道がに分かれていますが、 「鳥取方面」の標識が指す正面の狭い道を進んでいきます。 降り坂になった道を進み始めると、すぐの所にベンチなどが設置された畑ヶ平登山口があります。 路肩が膨らんで車2台分ほどの駐車スペースがあるので、ここに車を止めました。 「中国自然歩道 雨滝〜扇ノ山〜三滝 案内図」と題したや 「ブナ林と動物」の解説板などを眺めながら歩く準備をしました。
(登山道で見かけた道標に拠って、この地点を「畑ヶ平越」としておきます)
扇ノ山周辺に見られる動植物について
積雪量が多く北方的な特徴が見られる動植物相。 動物では環境庁(1991)RDB絶滅危惧種や国の天然記念物に指定されているものでツキノワグマ、ヤマネ、 鳥類でイヌワシ、クマタカ、オオタカなどが生息しています。 昆虫ではギフチョウや希少種で国蝶でもあるオオムラサキなどが見られます。 これら多くの動物が生息する広大な自然林はブナ、ミズナラ、スギやハウチワカエデ、イタヤカエデなどのカエデ類などの高木から中低木まで多様な植物が見られます。 北方系のユリ科であるタケシマランは鳥取県内では扇ノ山のみに分布しています。
イヌワシ(ワシタカ目:ワシタカ科)  環境庁(1991)RDB絶滅危惧種。 国の天然記念物。 イヌワシが生息する環境は、ブナやミズナラなどの自然林がわずかに残る山地であり、 鳥取県内での生息地が限られている。 環境破壊の進むなかでイヌワシは日本の豊かな自然の象徴とも言えます。
ツキノワグマ(肉食目:クマ科)  本県での生息地は県東部の八頭郡内の氷ノ山・東山・沖ノ山山系に限られており、 東中国山地(氷ノ山)の個体群が環境庁(1991)RDBで「保護に留意すべき地域個体群」として指定を受けている。
雨滝〜扇ノ山〜三滝の紹介
このコースは氷ノ山後山那岐山国定公園の広大な自然林の中を散策する探勝路です。 この山域は県下の山地の中ではもっとも積雪量が多くなります。 したがって、動植物相ともに中国山地の中では北陸地方に近い北方的な様相を呈しています。 植物では、公園内の各所にブナ、ミズナラ、スギの原生林を見ることができます。 特に三滝周辺の原生林は中国地方三大ブナ林(大山・氷ノ山・冠山)に継ぐ規模とも言われ、 その他にも扇ノ山周辺も広大な原生林に覆われています。
ブナ林と動物
扇ノ山山域は県下でもっとも積雪量が多く、北方的名特徴をもち、 ブナ自然林、深く切り込まれた渓谷の発達などが多様で豊かな動物相を産み出しています。 山地性希少動物、環境庁(1991)RDB絶滅危惧種などの重要生息地としても知られています。 環境庁(1991)RDB絶滅危惧種や国の天然記念物に指定されているものでは ツキノワグマ、ヤマネ、ヌワシ、クマタカ、オオタカなどが生息しています。 昆虫ではギフチョウが広く生息し、全国的にも最高地の生息地に入っています。 その他、希少種であるオオムラサキをはじめ多種のチョウ類が広域に生息し、トンボ、セミも多く見られます。 扇ノ山を国内の西限とする種がいくつか記録されています。
ギフチョウ(アゲハチョウ科)  環境庁(1991)RDB危惧種で日本の固有種。 本州だけに分布。 幼虫はカンアオイ類やウスバサイシンなどの葉を食べます。 さなぎで冬を越します。
オオムラサキ(タテハチョウ科)  環境庁(1991)RDB希少種で日本の固有種であり国蝶。 全長10〜11cm。
ムカシトンボ(ムカシヤンマ科)  日本の特産種。 からだは不均翅亜目に似、はねは均翅亜目に似るという両方の特徴を持つ特異なトンボです。 山間の谷川におり、植物組織中に産卵します。 生きた化石と呼ばれています。
ヤマネ(ゲッ歯類:ヤマネ科)  環境庁(1991)RDB希少種で日本の固有種であり国の天然記念物。 からだつきはネズミに似ていますが、尾は長毛でおおわれ、扁平です。 前後足は短く、後ろ足の第1指は非常に短い。 ほとんど樹上で生活し、果実や昆虫を食べます。 尾長4.5〜5.5cm。
 (鳥取県)
沢川鳥獣保護区区域図
この区域は鳥獣の捕獲が禁止されております。 鳥獣の保護に、ご協力をお願いします。
 (鳥取県)
登山口にある「氷ノ山・後山・那岐山国定公園 扇ノ山入口 2700m」のに従って、 右へ戻るようにして続く広めで緩やかなを進んでいきます。 道端の笹竹や草などが刈り払われて間がないようで、歩き易くなっていました。 短い横木の階段を登って緩やかになった道を進んでいくと、小さな木橋が二つありました。 登山口から2分ほどの所になります。 手前の橋はしっかりとしていますが、奥の橋は半分に折れていました。
旧道分岐
両側には樹木が茂っていて、展望の得られない道を進んでいきます。 大きなも時折見かけました。 僅かな降り坂もある緩やかな道が続きます。 のような所を跨いだりしながら進んでいきます。 倒れている「扇ノ山1.9km」のを過ぎていくと分岐があります。 登山口から11分ほどの所になります。 角には壊れたが二つあって、 左の道は「扇ノ山頂上1.9km・河合谷高原8.2km」、今来た道は「畑ヶ平登山口620m」となっています。 右の道の入口には樹木が茂っていました。 その先を覗ってみると、広めの道が続いているようでした。 地形図に載っている実線の道のようですが、今ではあまり歩かれていない様子でした。 この先で見かけた案内板には登山道として描かれているので、かつて使われていた旧道でしょうか。 ここは、道標に従ってを進んでいきます。
緩やかになった広めの道を2分ほど進んでいくと、 道端に「畑ヶ平越0.7km」のが倒れていました。 今回の登山口は「畑ヶ平越」というのでしょうか。 上空にが広がる笹竹の回廊のような所を過ぎていきます。 緩やかな道の周囲には樹木などが茂ってトンネルのようになっています。 少し登って緩やかになるとボードウォークが現れます。 登山口から18分ほどの所になります。
短いボードウォークを過ぎて、 2本並んだ大きなを過ぎていきます。 僅かにを過ぎて緩やかに登っていくと、 倒れかかった「標高1100m」のが立っていました。 登山口から22分ほどの所になります。 標識の側面には消えかかった文字で「扇ノ山頂上1.5km・河合谷高原7.8km」と書かれているようでした。 それ以外にも文字があるようでしたが判読できませんでした。
引き続き、歩き易いを緩やかに登っていきます。 のような所を過ぎていきます。 少し登り傾斜が増してくるとが現れます。 階段を登り切って、少し傾斜が緩んだを進んでいきます。 傾斜が緩んで道なりに左へ曲がっていくと、道端に「ブナ林について」と題した解説板がありました。 登山口から34分ほどの所になります。
ブナ林について
扇ノ山、陣鉢山、氷ノ山と連続する鳥取県東部を代表する山稜は、かつて有数のブナ林帯の自然林域であった。 今では、山頂部南面の細見川源流域には原生的は極盛相のブナ林が保全されているが、 北に向う稜線部には二次林と思われる比較的若いブナ林が続いている。 ブナ林には、カエデ類(ハウチカエデ、コミネカエデ、イタヤカエデ他)などが中高木層を構成し、 低木層ではオオカメノキ、クロモジなどが茂っている。 草本類はヒメモチ、ヤマソテツなどに混じり北方系の植物も見ることができる。 とくに、タケシマランは県内では扇ノ山のみに分布する北方系のユリ科の草本で注目される。 また、ブナ林内の老木の樹上に着生する希産種のユキノシタ科の小低木ヤシャビシャクも見られる。 谷沿いには希産種のオオバミゾホオズキやミヤマシシガシラが出現する。
ブナ(ブナ科)  温帯の山地に生え、高さ30mになる落葉高木です。 樹皮は灰色でなめらか、若枝は褐色で光沢があります。 雌雄同株で、花は大部分が若い枝の葉腋につきます。 日本海側のブナは、根本に雪が残っている頃から葉を拡げ始めます。 果実は成熟すると食べることができます。
ミズナラ(ブナ科)  山地に生え、大きいものは高さ35mぐらいになる落葉高木です。 樹皮は黒褐色を帯び、縦に不規則な裂け目があります。 葉は長さ5〜20cmの倒卵状長楕円形、堅実は1.5〜2.5cmの卵状楕円形で、実はリスやクマなどが好んで食べます。
イタヤカエデ(カエデ科)  山地の谷間のようなところによく生える落葉高木。 高さ20〜25mになります。 葉は有柄で対生し、径7〜15cmの扁円形で5〜7中裂または浅く裂けます。 秋には黄葉します。 翼果は長さ2〜3cmで直角または鋭角に開きます。
ハウチワカエデ(カエデ科)  山地に生え、高さ10〜15mになる落葉高木。 和名は、葉の形を天狗の持つ鳥の羽根で作ったうちわにたとえたものです。 葉は径7〜12cmと大きく、掌状に浅く9〜11裂し、秋には美しく紅葉します。 コハウチワカエデは葉の径が6〜8cmとずっと小さいです。
緩やかになったを進んでいきます。 両側に樹木や笹竹が茂って展望の得られない道を7分ほど進んでいくと、 が現れます。 次第に傾斜が増してくるので、何度も立ち止まって呼吸を整えながら登っていきました。 切断されたを過ぎていきます。 階段が途切れると僅かな高みに着きます。 登山口から45分ほどの所になります。 ここで道は左へ曲がって、少し降るようになります。
大ヅッコ分岐
程なくして登り坂になると、再びが現れます。 途切れながら続くを登っていくと、 左右に通る尾根に登り着きます。 登山口から54分ほどで登って来られました。 正面にはが立っていて、右の道は「河合谷登山口2.8km」、 左の道は「扇ノ山頂上0.4km」、今来た道は「畑ヶ平登山口2.3km」となっています。 角にある腰の曲がったの袂には、 「扇ノ山」や「畑ヶ平高原」を指す標識の板がありました。 右の道は大ヅッコへ続いていますが、左にある横木の階段を登っていきます。
(右の道は「扇ノ山」を参照)
展望デッキ
横木の階段はすぐに終わって、緩やかでを登っていきます。 大ヅッコ分岐から2分半ほど登っていくと、道端に展望デッキがあります。 右側が開けていてを見渡せる眺めが広がりますが、 雲が出ていたのが残念でした。 脇には「山陰海岸ジオパーク 扇ノ山」の案内板が立っていて、も載っています。 今回のルートも載っていますが、「扇ノ山頂上1.9km」の道標があった旧道分岐からは、 地形図に実線で載っている道が描かれているようでした。
中国自然歩道 山陰海岸ジオパーク 扇ノ山
扇ノ山は鳥取県と兵庫県の県境に位置する標高1309.9mの盾状火山で、 上部には西日本では数少ない良好なブナ林がまとまって残っており、 多種多様な野生生物や植物を見ることが出来ます。 火山噴出物は、新生代第四紀更新世の玄武岩や安山岩の溶岩流が主で、 山頂付近から北、北東、南西の三方向に流下し、なだらかな山体をつくっています。 標高900m前後の中腹部には河合谷高原や上山高原、広留野、畑ヶ平などの平坦な台地があり、 牧場や高原野菜の畑地として利用されています。 台地の周縁には急崖がつらなり多くの滝が見られます。
 (環境省・鳥取県)
扇ノ山 (標高1310.0m)
展望デッキを後にして、を登っていくと、 程なくしてが見えてきます。 道を塞ぐようにして生える(*)の下をくぐっていくと、 小広くなった扇ノ山の山頂に着きました。 大ヅッコ分岐から9分ほど、畑ヶ平登山口から1時間3分ほどで登って来られました。 中ほどには扇ノ山」があるので、 地形図に載っている1310.0m峰になるようです。
*後日に来てみると、曲がった樹木は無くなっていました。
三角点
基本測量
大切にしましょう三角点
国土地理院
山頂にはベンチが幾つか設置され、「山陰海岸ジオパーク」のもありました。 山頂の周囲には樹木が茂っていて展望はあまり良くありませんが、東から南にかけての山並みを眺めることが出来ました。 南南東の方角にはが聳え、山頂にある避難小屋も微かに見えました。
中国自然歩道 山陰海岸ジオパーク 虫や鳥は友だち
オオムラサキ、フジミドリシジミ、エゾハルゼミ、キビタキ、アオゲラ、クマタカ、ヤマセミ
 (環境省・鳥取県)
扇ノ山避難小屋使用について
1、 この避難小屋は登山者の安全を守るため、一時避難と休憩場所として建設されたものです。
2、 この小屋は誰でも自由に使用できますが公共施設ですから大事に長く使えるよう心掛けて下さい。
3、 火の元は出るとき完全に始末をして出て下さい。
4、 ゴミ・残飯・不用品などは小屋の中に残さぬよう持ち帰って下さい。
5、 この小屋を使用したあとは、次の日とが気持ちよく使えるようきれいにして帰りましょう。
6、 小屋を出るときは、一階、二階の窓、入口戸を完全に閉めて出て下さい。
 (鳥取県自然保護課)
山頂にある扇ノ山避難小屋は二階建てになっています。 靴を脱いで二階に上がってみると、手前の樹木が邪魔をしているのが残念ですが、四方の窓から山並みを眺められました。 各方向から見える景色を描いた絵も置かれていました。
東側の、 南側の、 西側の、 北側の
「避難小屋使用簿」と題したノートが置かれていて、利用した方々の書き込みが何ページもありました。
扇ノ山避難小屋使用について
1、 この避難小屋は登山者の安全を守るため、一時避難と休憩場所として建設されたものです。
2、 この小屋は誰でも自由に使用できますが公共施設ですから大事に長く使えるよう心掛けて下さい。
3、 火の元は出るとき完全に始末をして出て下さい。
4、 ゴミ・残飯・不用品などは小屋の中に残さぬよう持ち帰って下さい。
5、 この小屋を使用したあとは、次の日とが気持ちよく使えるようきれいにして帰りましょう。
6、 小屋を出るときは、一階、二階の窓、入口戸を完全に閉めて出て下さい。
 (鳥取県自然保護課)
自然公園等整備事業
設置者:鳥取県(環境庁補助事業)
整備年度:平成6年度
山頂からは道が三方へ降っています。 中国自然歩道の道標が幾つか立っていて、 東南東へ降る道は「扇ノ山登山道・登山口2.0km・ふるさとの森6.5km」「ふるさとの森コース登山口2.0km」、 南西へ降る道は「姫路公園コース登山口1.8km」、 今回登ってきた北へ降る道は「河合谷登山口3.2km・畑ヶ平登山口2.5km」となっています。 今回は、北へ続く道を引き返していきました。
展望デッキ
道を塞ぐようにして生えるの下をくぐっていくと、 山頂から4分ほどで展望デッキに着きます。 左側に広がるを眺めてから、その先へ降っていきます。
大ヅッコ分岐
緩やかに続くを降っていきます。 程なくして現れる横木の階段を降り始めると、尾根に登り着いた所にある分岐に着きます。 山頂から7分ほどで着きました。 脇に立つ道標「畑ヶ平登山口2.3km」に従って、 登って来たを降っていきます。
途切れながら続くを降っていきます。 何度も立ち止まりながら登ってきた階段ですが、降る時は快調であります。 少し登って僅かなを越えて、右へ曲がりながら降っていきます。 階段が終わって、緩やかになったを進んでいきます。 道端にある「ブナ林について」と題した解説板を過ぎて、道なりに右へ曲がって降っていきます。 山頂から22分ほどの所になります。
再び現れる横木の階段を降っていくと、のような所を過ぎていきます。 歩き易いを緩やかに降っていくと、 倒れかかった「標高1100m」のがあります。 僅かに登る所を過ぎて更に降っていきます。 3本並んだ大きなを過ぎていくと、 短いボードウォークが現れます。 山頂から39分ほどの所になります。
旧道分岐
倒れた「畑ヶ平越0.7km」のを過ぎていきます。 樹木が低くなってを過ぎていくと、 地形図に実線で載っている道との分岐に着きます。 山頂から44分ほどの所になります。 角に倒れている道標「畑ヶ平登山口620m」に従って、 へ続く道を降っていきます。
畑ヶ平越
倒れている「扇ノ山1.9km」のを過ぎていくと、 を跨いでいきます。 少し登る所もある展望の得られない道を降っていきます。 小さなを二つ過ぎていくと、 車を止めておいた畑ヶ平登山口に着きます。 山頂から55分ほどで降りて来られました。